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鍋島 邦彦
JAERI 1342, 119 Pages, 2001/03
本研究は、ニューラルネットワークに過去の正常な運転データを学習させることによって原子炉のモデル化を行い、原子力プラントの異常診断に利用する手法について検討したものである。もし、異常な運転パターンがネットワークに入力された場合には、各プラント変数のネットワーク推定値は測定値と大きく異なってくるはずである。したがって、その偏差を監視することにより、原子力プラント内の微少な異常兆候を検知することが可能になる。まず、さまざまな異常事象を容易に模擬できるPWRプラントシミュレータを利用して、フィードフォワードニューラルネットワークとリカレントニューラルネットワークの異常検知性能の評価を行った。適応学習法を取り入れたフィードフォワードニューラルネットワーク及びフィードバック結合を持つリカレントニューラルネットワークは、プラント動特性や緩やかな状態の変化にモデルを追従させることが可能で、しかも定常運転時だけでなく過渡運転時に発生した異常事象についても、従来の監視システムよりもはるかに早い段階で検知できた。次に、フィードフォワードニューラルネットワークによる異常監視システムを、実際の原子力発電所(PWR)に適用した結果を示した。1年間にわたるオフライン及びオンライン監視の結果、ニューラルネットワークが従来の監視システムや運転員が気づかないようないくつかの微小な異常事象を検知できた。さらに、ニューラルネットワークを用いた感度解析を行い、ニューラルネットワークが適切にプラントをモデル化できていることが証明された。最後に、ニューラルネットワークによる異常検知手法にエキスパートシステムを組み合わせた、高温ガス炉用ハイブリッド監視システムの開発について述べた。リカレントネットワークを採用することにより、比較的ゆっくりした動特性をもつ高温ガスのモデル化が可能になることがシミュレーション結果から明らかになった。